「三国志」というと古代中国の英雄譚、傑物伝といったイメージがあるかもしれません。
それに対しこの『秘本三国志』は物語としての要素を抑え気味にして歴史記録として綴っているという印象を受けました。

読むにあたってまず頭に入れておいた方が良いと思われる知識は、当時の中国の地名とその位置関係ではないでしょうか。

内容は「陣取り合戦」の過程を淡々と記録して行くような印象があり、そのための予備知識として当時の中国の地理を知っていたほうがスムースに読み進められると思いました。

一般的な三国志のイメージにあるようなドラマチックな要素を淡白に描く一方、読んでいて楽しい歴史教科書のようでもあります。

史実を追いつつ当時の文化の有様を感じ、かつ現代と何ら変わりない人間模様にも触れることができ、当時の中国を観測するような視点で読み進めることができました。

作中では作者が演戯物として語られている三国志と史料に記録されている内容とを検証、考証し、そのうえでどのように物語へと落とし込んだかという事を語るくだりがあり、歴史小説家の「仕事」の一端を垣間見ることができます。

世界観に没入できるということは無いのですが、物足りなさを感じるということも無く、良い意味で「蚊帳の外」の視点に立ち、三国時代を渡り歩いたような気分になりました。
自身を「少容」「陳潜」の後ろをくっついて歩いている登場人物のひとりとして読み進めると面白いかもしれません。

次は何の本にしようか。
しばらくまた歴史小説にはまるのもよいかなと考えてます。

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